ストーリーは、自殺に失敗した主人公が同じような環境で暮らしている男の子と出会い、共に自殺をする話。希望が一筋もないこの本の中に、リオンたちは閉じ込められている。

「死ぬのは、いつでもできる」

僕はそう呟き、ナイフをポケットに入れる。死ぬのは僕一人だけでいい。リオンたちが小説の中を永遠に彷徨い、死ぬのはダメだ。

「死にたい。それが僕の口癖だった」

物語の書き出しを言うと、僕の目の前が白い光に包まれる。この感覚を味わうのは一年ぶりだ。

僕はそっと目を閉じた。



目を開けると、そこはもう物語の世界だ。僕の目の前には主人公が住んでいる街がある。モノクロで重い印象を与える街だ。

人が百人いれば、同じものを見ても感じ方は百通り。世界に絶望している主人公にとって、この街はこのように見えているんだ。でも、今の僕もそれと同じ。心がモノクロで重いんだ。

「早く死なないと……」

この気持ちが薄れてしまわないうちに、リオンたちを助けて死のう。本の中で死んだら現実ではただの行方不明者扱いだ。誰にも迷惑をかけない。