この十年、彼を克服しようと頑張った。
 行事やイベントは彼と過ごすことにしていたし、彼が遠征すれば長文の文で彼の健康を労ったりした。
 行事やイベントごとでは回りを威圧させるだけだとベランダに逃げ、私に声をかける者がいれば、絞め殺す勢いで胸ぐらを掴むし。
 私主催のお茶会で、東屋に仁王立ちしていたときは流石に追い払った。

 そんな彼との初夜。

 申し訳ないと思ったのか、父と母は盛大にお祝いしてくれ、最高級のレースであしらったドレス、私と彼のために宮殿を作ってくれるほど。
 朝から彼の隣で、馬車に乗ってお披露目に出掛けたり、隣国からお祝いに駆けつけた皇族に愛想を振りまいたり。


「ダズさま」

 祝いのパレードが遠くで聞こえる中、ようやく二人っきりになれた時だ。
 私と彼は、宮殿の泉の前で座り、他の者達は泉の回りを囲みながら、お祝いに託けてお酒を飲み騒いでいる。
 その中で、横の彼を見ずに正面を見ながら私は無粋を承知で聞く。
「ダズさまは、私を愛してくれるんですか?」

 政略結婚とはいえ、兄たちは皆、幸せそうだ。
 父も母だけ。
 けれど、ダズ様とはどうしても暖かな家庭が想像できず、私は確認するために聞いた。
 私の未来の幸せのためだ。

 彼が、私を嘘でも愛してくれると言えば、私も頑張って彼を愛そうと思った。
 この十年、彼の良いところが見つからなかったが、結婚してからも探し続ければいいと。

「皇女さま」
 冷たい声だった。
「薔薇の花束を貴方に贈ります」

 言葉の裏を探ろうと彼の方を見た。

「その花弁を数えている間に終わらせます。それ以外、私は貴方に触れない」