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「今日は仕事に行きたくないな。もっと姫と一緒に居たい」
「……まあっ」
侍女にいれてもらった紅茶が、零れそうになったが、彼が受け止めてくれた。
そんなスマートなフォローも素敵。
「どうしましょう。私も同じ気持ちですの」
「そんな。嬉しいです。身に余る光栄すぎて」
「父に使いを送りますわ。ダズさまは体調が優れないと」
私がダズ様の手を取ろうとした瞬間、ノックも無くランスロット卿がこめかみをピキピキしながら入ってくる。
「今や社交界だけではなく国民からも大人気のお二人様、いい加減そろそろ新婚気分を抜いてみてはいかがですか」
「えええっ」
驚いた私が、ポットを倒しそうになり、彼がキャッチしてくれた。
「結婚してもう二年ですよ。いい加減、落ち着いて下さい」
リンスロット卿の言葉に、侍女が頷く。
仕方ない。
私たちの物語は今、始まったばかり。
幸せに締めくくるために、私は涙を堪えて、彼の背中を見送ったのだった。
私たちの幸せは、これからだから。
〆



