「困らせるつもりはない。貴方がこの二週間、忙しいふりをして、隣国の大魔術師を探しているのは、リンスロット卿に見張って貰って知っていました」
そんなに『大魔術師との世界統一聖女エンド』なるものを目指したいなら、勝手にすれば良い。
その行為で私が傷ついても、貴方がそれでいいならばもう諦める。
「甘く幸せな結婚は、前世に期待しますね」
数秒の沈黙が苦しくて、ベッドに潜って泣いて眠ろうと思った。
朝まで彼は、そこで自分の前世の記憶に浸っていればいいのよと。
私は、私のために好きな色の洋服やお花、お香を宮殿に準備させてくれるような、貴方を好きになりたいと思ったの。
ずっと貴方のことをもっと知りたかったの。
私の手紙に動揺した?
迷惑だった?
嫌じゃなかった?
もっと知りたかったのに、彼には私は御伽の中の姫にしか見えていない。
私を見てくれないんだったら、私だって来世に期待してやる。



