片腕で支えるのが疲れたのだろう、と推測しながら、まだカーテンが閉め切ったままの部屋を覗き込む。


「なんで……って、今日から一緒に住まわせてもらうからだよ?」


ほう……これが噂の1DKか。


思い伏せながら「ふむふむ」と踏み込もうとする夏杏耶を、左足で雑に引き止める奈央。


「たぶん……いま聞き間違えたから、もう一遍頼む」

「え?だから、今日からこの家に住むって、」

「……エイプリルフールは先週だぞ」

「知ってるよ、そのくらい。奈央クン、私のことすごいバカだと思ってない?」

「思ってるわ。今、まさに」


薄い唇から大きなため息が漏れる。同時に彼はひょいっ、と軽々キャリーケースを持ち上げた。


「……まぁ、とりあえず入れ。ずっと開けてっと虫が入る」


私の彼氏、スマートな紳士すぎない?!


代わりに重荷を引き受けて、すでに中へ運んでしまう彼の背を、恍惚と見つめた。


「お邪魔します……ッ」


そして、踏み入れた。


「……甘い……」


いつも制服から漂っていた香りの(こも)る、その部屋へ。