弱いって……静が……?
夏杏耶は立ち上がった勢いで掴んだ彼の肩に、思わず身を震わせた。
パーカー越しにも分かる筋肉の厚さ。着やせするってレベルじゃない……。あの夜。花谷通りで先頭を歩いていた理由が、今になって分かった気がした。
「お前……ほんとにタメかよ。その力」
ようやく解放された手首と肩を、交互に摩る静。
「大丈夫?」と駆け寄ったのは、美々だった。遠目にも一応、心配していたらしい。
「鋭いね、静くん。正確にはタメじゃない。あぁ、夏杏耶ちゃんは知ってるよね?」
そして振り向かれた夏杏耶は、ゴクリと喉を鳴らした。だって、また思い出したから。



