「奈央クンっ、来たよ!」

「……は……夏杏耶?」


うはぁっ……久々の裸眼ご馳走様です……!!


寝起きで眼鏡オフの奈央を前に、夏杏耶のメーターは『キュン』へ振り切る。


……が、しかし。チャイムのせいで不本意に起こされたからか、どうやら機嫌が良くないらしい。


彼は扉を長い腕で支えながら、眉間をキュッと狭めてキャリーケースを見下ろした。


「何の用だよ、朝っぱらから。……つーかこの荷物、」

「朝って、もう12時だよ?寝坊(ねぼ) 助蔵(すけぞう)さん」

「……ダサいあだ名つけんな。で、この荷物はなんなんだよ」


掠れた声が色っぽい。薄いTシャツがはだけて、これもまた堪らない。鎖骨がもう……再び、ご馳走様です。


「おい」


と、一旦浸った後で我に返る。


同時に、この無防備な姿を学内に晒したら、絶対モテてしまうと確信した。


「え、と……荷物だよね……。これは私の洋服とか、歯ブラシとかシャンプーとかコテとか部活の……」

「違う。中身じゃなくて、何でここに持ってきてんだっつー話」


奈央はほとほと呆れた様子で、扉に背を預けた。