「却下」
「に、逃げないでっ」
「おい、体重掛けんな」
「あと少し、ね?」
「無理。腕も限界」
ハッ……そういえば。
夏杏耶は横になりながら、視線をふと持ち上げる。
「腕枕……奈央クンが……?」
「ちがう。不可抗力」
「ひゃぁ……幸せ……」
「……もう、なんでもいいから退いてくれ」
何かを諦めたように彼は天井を仰ぐ。そして「……やべ」という言葉と同時に、腕枕ごと夏杏耶を起こし上げた。
「奈央クン?」
「時間」
「え?」
「朝飯はなしな」
それってどういう……と訊く間もなく、彼はものの一瞬で部屋着を剥ぐ。
まだ刺激の強い上裸姿に、夏杏耶は思わず顔を覆った。
「奈央ク……私その、ちょっとまだ、」
「何言ってんだよ。いいからお前も支度しろ。遅刻すんぞ」
「え…………⁈⁈」
8時05分。朝練には絶対に間に合わない……どころか、朝礼にさえ危ういライン。
ようやく理解した夏杏耶は、鳥の巣頭を整えに洗面所へ駆けこんだ。
「あぁもう……次は休みの日狙お……」
と、自分の間の悪さを呪いながら。



