ギロッと睨まれても怖くなんてないんだから。これって俗にいう、照れ隠しでしょう?
不覚にも締め付けられた胸を押さえるようにして、夏杏耶はグレンチェックを翻した。
「頑張ってね、勉強」
「ああ」
「じゃあ、また明日ねっ」
「……早く行け」
シッシッ、と手の甲を返されてから、ようやく後ろ手に扉を閉める。
……また、何か隠してた?
背後に熱を持たせたまま、そう思い返すのは何度目だろう。首を捻りながら、夏杏耶は廊下に足音を響かせていた。
「……また明日?」
だから、残された奈央も同じく首を捻っていたことに、気付けるはずもなかったんだ。



