言いながらフードを倒すと、2人の瞳がゆっくりと振り返る。
───『向けられる視線は、きっと……痛いばっかりじゃないから』
……本当、夏杏耶ちゃんの言うとおりだ。できれば君の純な視線を、俺だけに向けてくれたら、なんて……こっそり願っていたけれど。
「別に、忘れてねぇよ」
「これから一緒に補講でしょ」
眉を寄せる彼氏と、目を細める彼女。正反対のようで、無意識に掬い上げてしまうところはよく似ている。
あー……入り込む隙は、当分できそうにないなぁ。
「夏杏耶ちゃんと俺が補講で、なんで奈央まで付いてくるわけ?」
「図書室に用があんだよ」
「とか言って、実は俺と2人で行かせるのが心配なんじゃない?過保護だなぁ」
「……うるせぇ」
瞬間、染まった耳を覆い隠す彼女。塞がれた視界を広げれば尚更、2人は一層眩く見える。
少しは塞いだままでも良かったかも……ってさ、しばらくは傷心させてくれ。
「さ、じゃあ仲良く行こうね。3人で♡」
綺麗なこの世界で、生きていくために───
……なんてね。
End.



