ビール缶を取り上げながら、奈央は呆れた様子でキッチンへ向かう。同様に絆奈もあきれ顔で「煙ー」と言いながら反対側、ベランダに出た。


……本当、似た者親子だ。


思い伏せながら、夏杏耶は奈央の後ろを追って肩を寄せる。嬉しさのあまり、絆奈がいることを忘れてしまいそうになった。


「飯の準備するから離れてろよ」

「ん……ちょっとだけ」

「……つーか、あいつはいつ帰んだ」

「夏休みって言ってたよね。一週間くらいかな?」

「ハァ……邪魔だな」

「え?」


慣れた手つきでまな板を取り出した奈央。その流れるような仕草を見ていたら、途端、視界が奪われる。


「……!!」


キスをされていたことに気が付いたのは、剥がれた後。微かに触れた唇が、器用に持ち上がったのを捉えた瞬間だった。