【完】片手間にキスをしないで



「荷造りかー。まぁ、明後日だもんね。じゃあまた」

「うん……ばいばい、鮎世」


鮎世と分かれた後も、その手を一切緩めようとしない奈央。


うぅぅ……これが嫉妬……嫉妬というやつですか。


「何にやけてんだよ」

「え……い、いやぁ……」

「とにかく、早く片付けんぞ」


そんで、その後は覚悟しておけよ───


階段を先導しながら下ろされる視線から、ほんのり持ち上がった口角から、彼の意図を汲み取る。


「……っ、ずるい」


もう、本当に……。


染まった頬を冷ますように手を添えながら、夏杏耶は彼の後ろをたどった。


やけに心臓に響く鉄骨の音も、日が暮れるのと比例して明るく灯る『さめじま』も、あと2日でお別れなのか───そう感傷的になりながら、部屋の扉を開いた。



ガチャッ───。


「「ただいま」」

「おーっ、おかえり」


でも部屋の中から出迎える声は新鮮だ。