「女子が夜中にほっつき歩くなよ。危ないだろ」
「……慣れてるから平気」
「それ飲んだら帰れよ。変な輩も増えてるし」
「分かったよ。うるさいな」
これもきっかけは鮮明ではなくて。でも、否応なくコンビニの隅でココアをご馳走されたことは覚えている。
年は変わらないはずなのに説教じみていて、初対面なのに過保護で。変な奴だと思った。
「うまい?それ」
「まぁ、普通に」
「へぇ……ダークチョコレートは当たりか」
「は?」
「さっき混ぜておいた」
「はぁ??」
でも、それから———癇癪を起こした親から逃げるときはそのココアの味を思い出して、奈央の姿を探すようになった。
会えばガードレールに腰を下ろして、同じココアを嗜んだ。
「幸せ、ね……」
そうして何度か不毛な時間を重ね信頼を覚えたのか、家出の事情を話すようにもなった。



