【完】片手間にキスをしないで



それでも今は、引くわけにはいかなかった。


「あなたが本当に壊したいのは、きっと奈央クンじゃない」

「……れ」

「やり方は違うけど、あなたと私は同じ……ずっと奈央クンの気を引きたくて、」

「黙れ!!」


〝彼女〟の声がこだました瞬間、推測は確信へと変わる。


ミャオは乗り出そうとする体を絆奈に押さえられ、夏杏耶を鋭く睨み上げた。


「僕は違う……そんな浮ついた気持ちと一緒にするな!!お前なんかが奈央と居るから……お前みたいな、ブスでバカな女なんかと一緒に居るから……僕は、それで、」


徐々に細くなっていく声。うなだれていく体。終いには力を失って、萎れたように座り込んだ。


「こんなブスにかまける奈央なんて……壊す価値もない」



宮尾(みやお)悠理───通称ミャオ。


彼女はそう放ったのを最後に、瞳から色を失くした。