それでも今は、引くわけにはいかなかった。
「あなたが本当に壊したいのは、きっと奈央クンじゃない」
「……れ」
「やり方は違うけど、あなたと私は同じ……ずっと奈央クンの気を引きたくて、」
「黙れ!!」
〝彼女〟の声がこだました瞬間、推測は確信へと変わる。
ミャオは乗り出そうとする体を絆奈に押さえられ、夏杏耶を鋭く睨み上げた。
「僕は違う……そんな浮ついた気持ちと一緒にするな!!お前なんかが奈央と居るから……お前みたいな、ブスでバカな女なんかと一緒に居るから……僕は、それで、」
徐々に細くなっていく声。うなだれていく体。終いには力を失って、萎れたように座り込んだ。
「こんなブスにかまける奈央なんて……壊す価値もない」
宮尾悠理───通称ミャオ。
彼女はそう放ったのを最後に、瞳から色を失くした。



