【完】片手間にキスをしないで



「ちょっと、バカ息子」

「……ん」


額の血を拭った後、そして周りの黒服が絆奈の仲間によって取り押さえられた後、奈央は母親に視線を流す。


「ん、じゃないよ。早く状況説明して。どうしたらいいの?このガキんちょ達」

「言っただろ……夏杏耶を攫って、俺を引っ張り出そうとしてるって」

「ふぅん。で、攫っただけなの?夏杏耶ちゃんに何かした?」


腰に手を置いて、余裕綽々とミャオを見下ろす絆奈。微かな光を反射するその長い髪は、何よりも綺麗で逞しかった。


「答える義理なんてな、」

「しました。俺と悠理は、カーヤちゃんに手を出しました」


ミャオに重ねて言ったのは、しばらく俯き黙っていた海理で。絆奈は彼に視線をやった後、大きく息を吐く。


「分かったわ。……じゃあ、何発入れればいい?」


そしてもう一度ミャオを引き寄せて、鋭く目を剥いた。


「は、絆奈さん……!」