【完】片手間にキスをしないで



月明かりに照らされた横顔が優しすぎて、ポン、と頭に置かれた手を今すぐ引いてしまいたくなる。


「お前は俺が守るから」


それでも、頬に触れながら言う彼を見上げるばかりで。カチャリと外された伊達メガネを渡されたあとも、夏杏耶は黙って背を見つめていた。


本当にいいの……?これで、本当に私は……。


「これ全員、お前の仲間か。ミャオ」

「そうだよ。強いよ。昔よりずーっと」

「……へぇ」


ドサッ───。


「ひぃっ……」


動きなど何一つ捉えられないまま、すでに1人の男が横に伸びる。黒服をまとったその男は声にならない声を上げるだけで、一言も発しなかった。


え……嘘。まさかこれ、奈央クンが……?


「夏杏耶。目ぇ瞑っとけっつったろ」

「で、も……」

「いいから」


言いながら、無言で襲い掛かる黒服を1人、また1人とのしていく。