【完】片手間にキスをしないで



「君を、内側から全部壊したいから」


夏杏耶の問いかけに応じるように、彼にしては静かに落とされる声。


「だいじょーぶ。ちゃんとヒントはあげるからさァ。奈央が来るまで、夏杏耶ちゃんがどうなっちゃってるか……せいぜい覚悟しておいでよ。なぁ───お前ら」


直後、大人しく並んでいた黒服数人が動き出す。彼らが夏杏耶の方へ距離を詰めるのと同時、ミャオはスマホのカメラを向けた。


『夏杏耶……ッ!』

「え……?」


自分が映し出されていると悟ったときには、夏杏耶は大柄な男たちに囲まれていて。


「クヒヒヒッ、いい声だなぁ。もっと喚いて、頑張ってよ。ほら、夏杏耶ちゃんも応援しよ?僕と一緒にさァ」

『……っ』


狂気に満ちた鈍い瞳に、ゾクリと体が疼いた。


ほとんど身動きの取れない自分に、何がなされようとしているのか───馬鹿でもわかる状況だった。


「さぁて、ヒントは一周。一周だけだよ?」


言いながらミャオは薄暗い部屋の中を巡り、カメラに映し出す。


『夏杏耶。少しだけ待ってろ』


そしてその言葉を最後に、奈央の声はぷつりと途絶えた。