【完】片手間にキスをしないで



切羽詰まりながらも半分笑みを零したような彼の声は、自然と硬直した体を解していく。


奈央クン。たとえ一緒に暮らせなくても、少しは平気かも。だって……声だけでこんなにも、心が満たされる。


「チッ……うっざ」


一瞬笑みを消したミャオを見ても、彼の声が傍にあるだけで、もう恐怖は芽生えなかった。


「ンまぁとりあえず、今こうなってんのは奈央……君のせいだよ。分かってるよね?焦ってるよね?あぁ……死にたくなった?」

『夏杏耶に手ぇ出したら殺す』

「ふぅん。早く壊れちゃえばいいのに」

『何が目的か言え……こんな電話寄越して、夏杏耶を攫った意味はなんだ』


攫う……そっか、私は攫われているのか。


奈央が紡ぐ言葉の中で、夏杏耶は改めて自分の状況を理解した。そしてそれは、到底縁遠いと思っていた〝拉致〟という言葉に結び付く。


ミャオは一体、何がしたいの───?