糸口は未だ掴めないまま、近づくミャオの影に眉を寄せた。
「怒られたじゃん。きみのせいで」
「へ……」
何、これ───。
ヒヤッ、と首元を掠める鋭利な感触に、夏杏耶は腑抜けた声を上げる。
「ちょっと早いけど、まぁいっか……どうせ、奈央には来てもらわなきゃいけないし」
「は……奈央クン……?」
「えぇー。もう忘れちゃったァ?僕、奈央を壊したいって言ったよねぇ」
瞬間、チクリとした痛みが首筋に走る。彼の手元に視線を落とすと、そこには彫刻刀が握られていた。
壊したい、という言葉も相まって、その刃は一層鋭く見えた。
「……ッ」
怯えて、声を上げることすらできない。せっかく麻薬が解けたというのに、何も。
体の震えが止まったのは、その直後だった。
「冬原奈央で、間違いないか」
こちらを横目で窺いながら刻む、海理の口元。夏杏耶は一瞬、恐怖を忘れた。



