【完】片手間にキスをしないで



「カーヤちゃんは、ここに連れてくるだけだって言ってたろ」

「別に、僕大したことしてないじゃん……あいつら誰も手ぇ出してないし」

「そんなこと、最も俺が許さない」


言いながら海理は、同じ体制で並ぶ黒服たちに視線を向ける。


その後もしばらく続く兄弟喧嘩に耳を立てながら、夏杏耶はあることに気が付いた。


「……あれ」


足が、動く───


麻酔薬も時間によって効力は薄まるもの。つまり、体は徐々に回復へと向かっていた。



「あーもう、うるっさい!! いいよじゃあ……呼べばいいよ!!」


ガタンッ───!!


しばらくして、ミャオの激昂(げっこう)する声が室内に走る。蹴られたイーゼルが床に叩きつけられる音に、夏杏耶は肩を震わせる。


一方で、海理は呆れたようにスマホを光らせた。


呼ぶって何を……どうして海理くんが……?