【完】片手間にキスをしないで


ガチャッ───


そういえば姐さんって……奈央クンのお母さん、絆奈さんのことだよね?ということは、お仲間の鮫島さんって……。


思い伏せながら、扉を開く奈央の後ろに縮こまる。


「何突っ立ってんだよ。冷えるぞ」

「あ、のさぁ……絆奈さんって元ヤンだったんだよね……?」

「ああ。それが?」


いまさら?と、奈央は涼しい顔で首を捻った。


何を隠そう、彼の母・絆奈は息子が生まれるまで地元のヤンキーを仕切っていた女総長で。


「っていうことは、大将も……」

「元ヤン。用心棒」

「や、やっぱり!!」


あの肩幅にも納得がいく。夏杏耶は目を輝かせて、拳を握りしめた。


「じゃあ、護身術とか今度教わっちゃおうかな」

「……は?何言ってんだよ。阿呆か」

「本気だよ。私は本気で強くなりたいんだもん」

「お前が強くなってどうすんだよ」

「どうするって、そりゃあ……」

「つーか冷えるって言ってんだろ。早く入れ。締め出すぞ」

「はっ、はい!」