【完】片手間にキスをしないで



言い淀んでいると、髪にミャオの手が伸びる。そして、根本から裂けそうなほど強く引っ張られ、夏杏耶は呻いた。


「……ッう、イタい、や、めて、」


ブチブチッ、と脳裏をたどる音が生々しくて、いっそう心が潰れそうになる。


奈央クンも、鮎世も……そうだったのかな。理由もなく、ただ快楽と鬱憤を晴らすためだけに、傷つけられていたの……?


締め付けられていると分かっているのに、反射で抗おうとする体。そのせいか手首も傷んでいるはずなのに、涙はひとつも零れなかった。


悠理(ゆうり)……っ」


でも、解放されたとき───ジィン、と広がる痛みの余韻に、少しだけ緩んでしまった。


「ハァ?何?邪魔すんなよ」

「やりすぎだ……女の子だぞ」


ミャオの腕を掴み、止めてくれたのが海理だと悟ったのは、呼吸を整えた後。


「兄貴に止める権利なんかないんだけど」


ミャオは強くその手を振り払い、海理を睨んだ。