【完】片手間にキスをしないで



知らぬ間に頬が解放されていたことなど、気付く余裕もなく。


叩かれた頬の痺れも、口内に響いた痛みも、このときばかりは無に帰していた。


「きゃはははっ、そうそうそれ!それダヨ、その顔が見たかったんだぁ僕!」

「は……?」

「夏杏耶ちゃんの友だちの彼氏、なんだってねぇ。うちの〝兄貴〟」


兄貴……?海理さんが、ミャオの……?それって何……全部偶然?それとも、今日までずっと───


ショートしそうになる思考にうなされて、夏杏耶は首を横に何度も振る。


まとまらない。まとまりきらない。


「あー……そうだなぁ、まだわかんないかなー。夏杏耶ちゃんをここまで連れてきたのは、海理だよ」

「……え?」

「なー、そうだよなぁ? 海理」


ぐりん、と異様な角度で回るミャオの首元に、海理の喉が鳴る。


そして、彼は静かに頷いた。


「カーヤちゃん、が、1人になったところを、俺が……」