【完】片手間にキスをしないで



もう二度と、中学の頃のようには傷付けさせないと、誓ったからだ。


「ヒントだよ、夏杏耶ちゃん」

「……?」

「ここがどこか、ちゃんと当ててごらん。そしたらもう叩かないし、ね? 妙案でしょう?」


ほら。早く出て来い───


痛む頬に顔を歪めながら、続けたミャオの視線を辿る。扉の向こう、月明りを覆うように現れる、背の高いシルエット。


ヒントとは、ある人物を差していた。そしてそれは、


「えっ……?」


夏杏耶の息を、詰まらせた。


「ごめん……カーヤちゃん」


掠れた声。俯いた視線。高身長で、爽やかなイケメン。


はじめて会ったのは、そう……この前の学祭だったはず。


───『まぁ、顔は全然鮎世くんの方がカッコいいけどー……とにかく、優しいんだよね。包容力っていうの? 地雷ない感じが、安心できていいんだよね』


あまり惚気たがらない美々が、そう話していたのはいつのことだったっけ。


「……どうして、貴方が……」


立っていたのは、美々の彼氏───海理だった。