【完】片手間にキスをしないで



──────……


『夜中は絶対、1人で出歩くなよ』


コンビニの袋をぶら下げながら、街灯の下を歩く〝お遣い〟の帰り道。


同居を始めた頃に奈央から受けた忠告が、夏杏耶の脳裏を過った。


「でも、断れないよね……」


まさに『猫の手も借りたい』な状況だったみたいだったし……と、心の内で言い訳を付け加える。


ちゃっかり『アイスクリーム』という名の賄賂も用意してあるし、きっと許してくれるだろう。


ああ見えて、奈央クンは甘いものに目がないからなぁ。


「……」


カサカサ、と揺れる袋に視線を落としながら、夏杏耶は再び記憶を辿る。


『私もクッキークリームがいい!』


言い出せずにいた当時、駄菓子屋で。彼と出会っていたことを、どうして今まで思い出せなかったんだろう。

そのあと来るホワイトデー、ヒーローのように現れた彼が、あまりにも強烈に印象づいてしまったからか。