「あれって……」
思わず出た声を手で覆う。そしてもう一度、彼の手元に焦点を合わせた。
……やっぱり。
彼はチョコペンを握り、ガラス製のプレートの端にそのデコレーションを落としていく。
統一された太さ、速さで、滑らかに落ちていく。まるで解かれるリボンのように、スルスルと。
加えて真ん中には、ホールのショートケーキを携えていて。その形を崩さなように、数ミリ単位でプレートを微調整しながら着飾っていく。
「……」
箱が置いてあるということは、ケーキは市販の物だろう。だからきっと、彼が作り上げる飾りは脇役の一部に過ぎない。
それでも夏杏耶には、指を震わせながら出来上がっていくデコレーションが、いちばん心を揺さぶるように思えた。
───『はい、完成。食ってみな』
あれ……なんだっけ、これ。
揺さぶられながら、突然フラッシュバックしたとある記憶。
作業を終えた彼が一息つき、安堵したように完成を見つめた瞬間、それはより鮮明に浮かんだ。



