【完】片手間にキスをしないで



「い、って……」

「あいつは……ミャオはいま、誰とどこにいる」


舌に施されたフープピアスから、微かに血が滲む様を睨み見ながら、その喉元を肘で押し付けた。


「っ……手荒だな……俺、一応ケガ人なんだけど」

「関係ねぇよ。吐け」

「それは無理だな」

「答えろ」

「怖いなぁ……見当ついてるって顔?それ」


ふっ、とかかる息が癪に障る。頭に血が上りそうになるのを、奈央は懸命に耐えた。


……焦るな。確実に引き出せ。


そもそも、どうしてこいつは置き去りになっていたのか。どうして、わざわざ手掛かりを残すような真似を───


「あいつは俺をどうしたい」

「だから言ったろ。あの人の考えていることは解らないって」

「……俺に直接手を下すほうが良い……そう言ったな」

「ああ。直接あんたをやれば、俺も肘打ちなんて食らわずに済んだ」

「肘打ち……へぇ、隙だらけじゃねぇか」

「ぅ、ぐ……ッ」


喉元にいっそう腕を押し付けると、男は顔を歪めて呻いた。