【完】片手間にキスをしないで


夏杏耶は連れられるがまま、コンビニから遠ざかる。


待ってよ、待って……荷物置きっぱなしなんだけど……!!


心の内で叫ぼうにも、当然彼らには届かない。(おのの)く以前に混乱していて、うまく声が出せなかったんだ。


「つーかよぉ、今日は来んのかよ。あいつら」

「あー……なんだっけ、ガオウだっけ?」

「それそれ。ミャオっつー奴が仕切ってんの」

「そういや、最近音沙汰ねーよなぁ。何してんだか。アユセ、なんか知ってる?」


ガオーとか、ミャオとか……今度は鳴き声責め。


やっぱり、まったく糸口がつかめない。一貫してネコ科なのは、何か意味があるのだろうか。


繁華街の真ん中を堂々と行く先頭(アユセ)。そして振り返る彼を見据えながら、夏杏耶は首を捻った。


……この人は、纏う空気が他とは違う。目が合うだけで、身が締まるような感覚を覚えてしまうほど。


「さーね」


フードの中でクスッと揺れる笑みが不敵さ満載で、思わず鳥肌を立てた。