───が、それは残念ながら叶わない。
「ひぇ……」
声を上げたのも束の間、目の前にはズラッと並ぶ数人の男。中にはバイクを引いている人や、ガテン系の人が揃っている。
……ほら、思った通り。勘だけは冴えているんだ、私って。
夏杏耶は震える拳を握りしめながら、彼らに塞がれた退路へ視線を落とした。
「子猫ちゃんってより、子ウサギちゃん、かな」
『アユセ』と呼ばれたフードの男は、気だるそうな口調で放つ。
大体、猫とかウサギとか、怖い顔して一体何を話しているのだろう。もしかして、暗号?……まるで意味が分からない。
「つーか、ここ駐車場じゃん。俺ら邪魔じゃね?」
「確かに。アッチ行こうぜアッチ」
ああ、よかった。どこかへ行ってくれるみたい。これで、目を合わせずに大人しくしていれば、きっと前も開ける。
そう、信じていたのに。
「ほら、ウサギちゃんも」
「へっ……?!」
グイッ、と引っ張られる腕。まだ足の痺れも残っていたためか、うまく踏ん張ることができなかった。



