「ハァ……ねぇこれ、鮎世の差し金?」
「まぁね。結構やるでしょ、俺」
「ふーん。ま、いいや。帰んぞお前らー」
あっけなく、しかも欠伸を拵えながら背を向けるミャオ。
庇うように佇む鮎世の後ろ、その姿を見据えた夏杏耶はホッと息を吐く。でも、
「おい、逃げんのか?!」
「ミャオてめぇ、落とし前付けさせろ……!」
「雅王、まとめてぶっつぶしてやる」
飛び交う輩たちの野次を背に、再び彼は立ち止まり───
「っ……」
ものの一瞬で夏杏耶の元へと舞い戻る。
同時に首元に添えられた彼の右手が、その場の全員を凍てつかせた。
「カーヤちゃん……覚えておいて———僕は奈央を、壊したいんだ」
最後、耳元で放たれた言葉は、刺すように鋭くて。
「ああ……あと君たち、追わない方がいいと思うよ。外じゃあ、きっと手加減できないから」
ヒラヒラと手を振りながら去っていく姿が、いつ遠のいたのか。そんなことすら、分からなかった。



