【完】片手間にキスをしないで



「あぁ?……んだよ、この音」


急にドスを効かせるミャオの声さえ、かき消される。


黒服たちを囲うように停まるバイク、4台。


同時に外されていくメットは8つ。見据えながら夏杏耶は、ハッと目を見開いた。


「あの人たち……!」

「あれ……奈央しか目がない夏杏耶ちゃんも、覚えてた?」


覚えているも何も……あの中の一人に、私は思い切り蹴りを……。


「来たぞー鮎世ー……えっ。つーか、子ウサちゃんじゃん?!」

「うわマジかよ……俺いまだにトラウマだわ。あの蹴り」


ほ、ほら、やっぱり……!


夏杏耶はばつが悪くなり、顔を俯かせる。


花谷通りで、奈央の護衛に徹したあの夜を思い出した。


「えぇぇ……何人いんだよ。めんどくさいなぁ」


鮎世の仲間───バイクで現れた人たちは、おそらく8人。それ以外にも、別の手段で追いついたのが2、3……4人。


それでもミャオが取り乱すことはない。彼はただ気だるそうに、辺りを見回した。