【完】片手間にキスをしないで



「〝雅王(がおう)〟って知らない? 僕、一応そのチームのリーダーなんだけど」

「し……知らないです……あなたの、名前は、」


奈央クンの知り合い。良くない方の知り合い。だったら、掴まなきゃ。情報を。


口に出る言葉と同様、途切れ途切れに紡がれる心の声。


軽くなったはずの右手首は、どうしてか。鮎世との繋がりを断たれた途端に重く感じられた。


「名前ね……愛称なら教えてあげる」

「愛称……?」

「僕は〝ミャオ〟だ」


ミャオ……ガオウ……あれ、どこかで……。


「夏杏耶ちゃん、今だよ。逃げて」

「……え?」


ブォンッ、ブォンッ───!!


息を整えていた鮎世が、静かに身体を持ち上げる。同時に振動するアスファルトに、夏杏耶は目を泳がせた。


「この音……」

「俺って本当……用意周到で惚れ惚れするよ」


自画自賛は彼の常套句(じょうとうく)なのか。


考えている間に、目を眩ませる複数のライト。それは、バイクの知らせだった。