【完】片手間にキスをしないで



「鮎世っ……鮎世!」

「ケホッ……ハハ。平気だよ、このくらい……まともに食らったのは、久しぶりだけど」

「しゃ、喋んなくていい!」


ふぅっ、と不安定に漏れる吐息が、鮎世らしくなくて落ち着かない。


手錠があるから重力のまま落ちたけど、手錠がなくともきっと、彼を案じて膝を立てただろう。


たった謎解き数十分。それでも、鮎世が悪人でないことは明白。


同族嫌悪は健在でも、放ってなんかおけない。たとえ、後ろに立つ相手がどれほど怖くて強い相手でも。


「ねぇ、退きなよカーヤちゃん。怪我するよ」

「……嫌です」


どれほど鋭い声で、脅されようとも。


「カーヤちゃんはさぁ……奈央のカノジョでしょお?なんでソイツ気にすんのさ」

「……!彼女じゃなくても、友だ……仲間を心配するくらい、します」

「うわぁー。僕そう言うのダメだ。反吐が出る」