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一体、何人が目の前を通り過ぎたのだろう。
花谷通りが文字通り色めき始めた頃。夏杏耶はその一角のコンビニ前で、キャリーケースを道連れに座り込んでいた。
ピンポーンッ。
あ、またお客さん。
入れ替わりの激しい時間帯になったからか、入店音も頻繁に響く。
でも……そろそろ離れなきゃ、注意されてしまうかもしれない。
勉強はできなくても、そのくらいの分別はつく。
すでに「こいつ、いつまでいるつもりだ」と言いたげな視線を店員さんから浴びせられているし……潮時だ。
「結局、来なかったなぁ……」
案の定、とはいえ、正直2ミリくらいは期待していた。彼が、引き止めに探しに来てくれることを。
そのために、暗がりでも目立つコンビニ前に頓挫していたわけだし。奈央クンが通りそうな導線に居たわけだし。
……でも、来なかった。数時間待った自分の粘り強さを、今はただ称えたい。
夏杏耶は「ふぅ」とケースに体重を預け、立ち上がる。
「い……ッ」
ビリリッ、と足が痺れて体勢を崩したのは、ちょうどそのときだった。



