それと……胸元に金字の刺繍。
「じゃあ、お話しよっか。カーヤちゃん?」
縫われていた文字は『雅王』。チーム名か何か、だとしたらつまり、暴走族……?
再び静かに距離を詰める長を前に、夏杏耶は一歩後ろへ怯む。
しばらく封じられていた嗅覚が、彼に似つかわしくない香りを取り込んで、無意識に眉をひそめた。
月曜日、調理室から帰ってくる奈央とよく似た香り。バニラ系の、甘ったるい匂いだった。
「あなたは、奈央クンとどういう関係なんですか……?」
「うーん。どういう、かぁ。仲良しこよしな関係、かな」
「仲良し、っていうのは、嘘ですよね」
掲げられたピースに嫌気が刺す。鮎世から感じる奈央への友愛とは種類が違うと、すぐに感じられた。
そう……絶対、違うのに。
ニィッ、と口裂け女のように持ち上がる口角と、決して細まらない瞳が、夏杏耶の眼球を貫いて離さない。
金縛りのように。一切の身動きがとれないほど、硬直した。



