【完】片手間にキスをしないで



「そのつもりだよ。俺と夏杏耶ちゃんは繋がれてるからね」


声は冷静だけど、鮎世が従っているのはきっと同じ理由。


奈央クンのことも知っていたし……本当に、何者なの……?




「夏杏耶ちゃん、息平気?」


駐車場の片隅で、鮎世の声がコンクリートに反射する。地下は〝上〟よりも冷たい空気が流れていた。


「僕、お前に用はないんだけどな」

「知ってるよ。でも仕方ないじゃん……繋がれちゃってるし」


繋がれた手錠を見せつけながら、余裕綽々に微笑む鮎世。


まさか、私だけが拉致されないように、鍵を隠してたの? 鮎世は、最初からこうなるって分かっていて……。


「あ、そうだ。もう外していいよ、ミドリ」

「承知しました」


プハァッ───


冷たく鉛のような空気を、スゥッ、と一息に取り込む。その間にも〝ミドリ〟は小柄な〝僕〟の後ろについた。


割烹着のような、黒づくめの服……1、2、3……センターを除き、取り巻きは5人。


皆、同じ服を纏っていた。