【完】片手間にキスをしないで



綺麗なのに怖い。すごく怖い。……それになんだろう、この刺さるような視線……身に覚えがある。


「ふーん……君が、カーヤちゃん?」

「……」


グリンッ、と不自然な角度で曲がる細い首。色白で病弱にも見えるけど……たぶん逆だ。


夏杏耶は拳を握りしめながら思う。


……変に刺激したら、きっと食われる。というより、蹴りを入れる隙すらない。


「あれ?なんで答えないの?違うの?」

「んんっ……」

「あぁそっか。話せないよね、ごめんごめん。とりあえず地下(した)行こうか。ここじゃ、僕が話し辛いし。……ミドリ、それ覆ったままついてこい」


言いながら、夏杏耶の背後に視線をやる。


同時に「ミドリ」と呼ばれたのが、後ろから口元を覆う人物だと分かった。


「承知しました。……ほら、行け。お前も」


本当なら肘打ちで隙をつくりたいところだけど───


ダメ。前を行く〝あの(ヒト)〟が居る間は、むやみには動けない。