【完】片手間にキスをしないで



ゴゥン───……


出入り口。図書館には似つかわしくない重みで、自動ドアが開く。


瞬間、鮎世はフードを倒す。


広い窓から差し込む西日が眩しいのと同時に、彼の金髪も綺麗にそれを反射した。


「俺ってホント……惚れ惚れするほど勘がいいね」

「鮎世……?」


どうして今フードを───過った言葉を放てなかったのは、口が思うように動かなかったから。


「んぐッ、んんっ?!」


何これ、何これ……ハンカチ……? 誰かに口が塞がれてる……?


夏杏耶は懸命に酸素を取り込みながら、ジャラッと鳴る手錠、そして正面に映る複数の人影を見据えた。


「相変わらず乱暴だねぇ。女の子相手に」

「んんっ!んんん!」

「うんうん。大丈夫だよ、夏杏耶ちゃん。俺がいるし……俺もちゃんと、強いから」


妙に落ち着いている声を見上げ、夏杏耶は塞がれたまま目を丸くする。


鮎世の横にはすでに、一人の男が伸びていたからだ。