【完】片手間にキスをしないで



何だろう。おかしなところでもあったかな……?


勘のいい美々が、やけににやついているのが気になる。……ただ、それよりも。


「あの。ちょっと訊いてもいいですか」

「……うん?何かな?」


図書館に入る寸前、海理に顔を寄せる鮎世に、夏杏耶は理由もなく肝を冷やした。


「え……鮎世、どうしたの?」

「うん。少し気になることがあって、」

「……?」


こちらに目もくれず、この中で一番タッパのある海理を、気味悪いほどの笑顔で見上げる鮎世。


気になるって……今日が初対面、でしょう……?


夏杏耶は首を捻りながら、フードに隠された横顔を見据えた。


「海理くんって、弟か妹います?」

「え……うん。いるけど……」

「へぇ。やっぱり」

「……訊きたいのはそれだけ?」

「まぁ、ですね」


ずっと長男っぽいな、って思ってたんで───


そう続けたのが最後。鮎世は彼から遠ざかり、再び入口へ足を向かわせる。


「……」


なんなんだろう……妙に空気が重かったけど。


夏杏耶は海理を気に掛けながら、同じく中へと足を進めた。