【完】片手間にキスをしないで



エレベーターのなか、こぞってスライドされていたスマホの画面。毎日、何気なく打っているテンキー、および〝数字入力キー〟。


【「」:】=1、【☆♪→】=2……と連なり、解けていく。その感覚はやっぱり心地いい。


夏杏耶はペンを取り出し、記号の下に当てはまる数字を書き出した。


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    1    2    2    4  (円)
鍵は  ×    ×    ×    ×  の中に
   「」:  ☆♪→  <=>   「」:
    7    1    6    7  
      (?= パンケーキ×2)
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うん……今まで仏頂面をしていた暗号が、可愛らしいとすら思えてくる。


「あぁ……なるほど。すごいね夏杏耶ちゃん。一本取られた」

「えへへっ……ひらめいちゃった」

「素直だな」


傍で鳴らされる喉にも、今は憎ささえ浮かばなかった。


「だから、数字と数字で掛け算だよ!」

「まぁ、普通に考えればそうだよね……でも、わざわざテンキーで表したことに、他の意味はないのかな」

「他の意味?」

「たとえば、その数字にリンクするひらがなをタップする、とかね?」