【完】片手間にキスをしないで



それに───淡々と説き始めるから、動揺したように見えたことも、気のせいだと思えた。


「学祭の真っただ中、なんのイベントも行われていない図書室に来る人は、少ないと思わない?」

「確かに……でも、どうして人気(ひとけ)が関係するの?」

「鍵が、誤ってプレイヤー(俺たち)以外に見つかっちゃったら、まずいでしょ?せっかく在処を示したのに、万が一位置をずらされたりしたら」

「なるほど……!」


解答(こたえ)が見えていないことが嘘のように、絡まっていた糸が解かれていく感覚。


無自覚に顔を綻ばせてしまうほど、それはとても快感で。


パンケーキで摂取した糖分も相まって、凝り固まった脳は徐々にほぐれていった。


「あっ……ね、ねぇ……」

「うん?」

「私、すこしだけ見えた、かも」


……疑心暗鬼もいいところ。


とある記憶とひらめきに、夏杏耶は声を細めながら足を止める。ちょうど、図書館の入り口前だった。