【完】片手間にキスをしないで



……少し偉そうかな。


歯がゆくて、咳ばらいをしながら鮎世の視線を捉える。


と、彼の顔は中心から、じわりじわり赤く染まっていった。


「あ、はは……はは……どうしよう、俺」

「鮎世?」

「とりあえず暗号ね、暗号。あーうまいなぁパンケーキ」


棒読みもいいところ。彼は無理やり一口でケーキを頬張った後、勢いよく水で流し込んだ。


やっぱり……よっぽど気に障ったのかもしれない……ごめん、鮎世。


夏杏耶は火照った顔を伏せながら、軽く息を吐いて暗号を手渡した。


「これ……もしかして『パンケーキ』って書いてあるの?」

「うん。あ、ようやく解った?」


互いに頬を染めながら、テーブルに敷いた紙を覗き込む。


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谷 冷 竹 差 生
↑゜ ←  →  ↓  ↑
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「これ。矢印が示してる通り、部分的に漢字を切り取ると……『パンケエキ』になるでしょ」