【完】片手間にキスをしないで



「え……ここ?ほんとに、ここでいいの?」

「ん、大丈夫。パンケーキはここしかやってない」


というか、どうしてパンケーキ……?


手作り感のあるカフェの前。メニューボードへポップに記された『パンケーキ、612円』の文字と、暗号を見比べる。


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谷 冷 竹 差 生
↑゜ ←  →  ↓  ↑
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「どう?解った?」

「う……ん……?」

「やっぱり、夏杏耶ちゃんには難しいかなー」

「てっ、てゆーか手、もう放してよ」

「……うん。放すよ」


言いながら、フードを深く被る鮎世。


……声がか細く聴こえたのは、どうしてだろう。


「さ。とりあえず入ろうか。暗号の云々(うんぬん)は中で話すよ」

「え、一緒に?」

「唐揚げだけじゃ、まだ足りないんじゃない?」

「でも、」

「早く鍵、見つけたいでしょ?」


……不服。


夏杏耶は口を尖らせながら、言われるがまま鮎世の後ろをついていった。