見覚えのあるフードに、薄っすらと垣間見えるブロンド———間違いなく、鮎世だった。
それは昔から女の影を絶やさない男で、文字通り節操がなくて。だから夏杏耶は……お前が触れていい女じゃない。
「てめぇ……っ」
頭まで上った血の気が、濃くなっていく。我を忘れ、加減もままならないまま、奴から夏杏耶を引き剥がす。
ハァッ、ハァッ。
普通なら、いったん息を整えるところ。腕の中に収まる彼女へ、少し説教を垂れるところ。
ああ。まったく、らしくない。
澄ました顔でたたずむ旧友が夏杏耶の唇を奪ったように見え、かなりキていた。
「お前、節操ないにも程があんだよ……ざけんな」
「節操ないって……どこが?」
胸ぐらをつかんだ反動。パサリと落ちたフードに動揺のひとつもなく、奴は口角を持ち上げた。
頼むから、夏杏耶にだけは手を出すな───
なんて、どの口が言うんだよ。散々つっけんどんに突き返しておいて今更、調子がいいにも程がある。



