「言ってみたらいいんじゃない?」

優那も「からーい」と言いながら、ビールを飲む。

「何が?」

そこに肉野菜炒めが運ばれてくる。
これまた辛そうだ。
唐辛子が既に見えてる。

店員さんに「ありがとうございまーす」と言いながら、優那の顔を見た。

「『私たち、付き合ってみない?』って」

ビールを飲み込んだ後で良かった。
思わず吹き出してしまった。

「私が?理仁に言うの?」
「そう、軽くね、カジュアルな感じで」

それ、優那ならできるかもしれないけどさー、と優那を見る。

この美貌にそんなこと言われたら、9割の男が付き合うだろうな。

一方、私がそんな「付き合ってみない?」なんて言ってもサマにならない。

キャラクターの問題だ。

「みない」と言われて終わるのが目に見えてる。

「無理だなー、大体あの人女に興味ないもん」

私は激辛そうな肉野菜炒めに箸を伸ばす。

「女に興味がない25の男なんている?」

優那が「信じられない」という顔をしてる。
だけど、うちの研究室の、教授も、2個上の根本さんも、1個上のガルシアさんも、女なんて興味なさそうだ。

「あのね、環」と優那が口調を強めた。