20分後、戻ってきた理仁の手にはクラゲの幻想的な写真が載った広告があった。
「幻想ナイトリアム」という文字が見える。

「誘われちゃった」
「えっ」
「Oh,my God...(なんてこった)」

理仁の報告に、私とガルシアさんの声が重なった。

私が3年かかっても出来なかったことを、勝田エリーはこの短期間で・・・

「土曜日行こうって」

理仁の声に、ガルシアさんが小さく「wao」と呟く。

私だってワオだ。
切ない。

っていうか、私はなんでそれすらもできないんだろう。
20歳の子がサラリとやってるのに。

私の肩に李さんが手を乗せてきた。

そして理仁に聞こえないほどの小声でこう呟いた。

「I feel for you(あなたに同情するわ)」

バレてる。
私の片想いが、研究室中にバレてる。

多分、今、ショックが前面に出ている。

ああ、隠しきれない。

好きな人が、美人とデートに行っちゃう。

そのショックが隠し切れない。

「What should I do?(どうすればいい?)」

李さんに小声で聞いたものの、首をすくめるだけだった。

理仁が土曜日の夜、準ミスと幻想ナイトリアムなるクラゲの展示に行ってしまう。

理仁はただじっくりと広告を眺めている。

行かないで、ああ、行かないで。

私の心の叫びも虚しく、一週間が過ぎていくのだった。