受精卵に刺激云々言ってるところで、理仁のアパート前に着く。

「ありがと」

話を中断して、彼は屋根の下に跳んだ。

「私いなかったらどうしてたの」

そう聞くと、理仁はチラッと斜め上から降り続ける雨に視線を向けて「ああ」と言った。

「研究室には折り畳み傘置いてたよ」

そう言って笑う。

雨が少しずつ弱まり始めた。
明日の学祭は無事そうだ。

理仁が「じゃ、明日」と繋げた。

「うん、じゃ」

そう言って、軽く手を振りながら家路に着いた。

しばらく心臓が強く脈を打っていた。

研究室に戻らなかったのはなんで?

男心が分からない。