私はというと、正直論文どころじゃない。

もうまじでミジンコの性決定因子なんてどうでもいい。
ミジンコがオスになろうがメスになろうが、どうでもいい!

だけど、今、理仁は全てのエネルギーをそれに注ぎ込んでいる。

理仁の発表のためにも論文を書かねば。
書かないと、我々はただ学費という甘いキャンディーを舐めて突っ立ってるだけの用無し人間になってしまう。

年下の子たちも朝からずっと頑張っている。
私もやらなくては。

そんなこんなで、気付けば21時になっていた。
12時間、お昼を除いて研究室から出なかった。

目が痛い。

チラホラと帰っていく院生たち。
私も帰りたい。

だけど理仁だけはパソコンから目が離すことなく、ずっと打ち続けてる。

難しい英語の論文なのに、なんでそんなに手が止まらないんだろう。

そっか、頭の作りが違うんだ。