カサンドラの涙

新しいクラスメートの様子を観察していた際、潤はあることに気付いた。教室の真ん中あたりで女子が数人固まって話をしている。みんな楽しそうに笑い、好きなアイドルや俳優の話をしていた。しかし、その中にどこか作った笑顔を浮かべている女子生徒がいた。分厚いメガネをかけ、大人しい印象のセミロングの髪をした女子生徒だ。

「その俳優、私も好きだよ!ドラマ面白いよね!」

そうその女子生徒は話しているが、どこかその声のトーンは暗い。しかし、俳優やドラマが嫌いというわけではなさそうだ。潤は何が原因で彼女があんな風になっているのか気になり、さらに観察しようと集中する。すると、「お〜い」と世人に肩を叩かれた。

「何見てんだよ。新学年早々、誰かに惚れたのか?」

どこかからかうような世人の声に、潤は「違うよ!でも、あの子のことって知ってる?」否定しながらも女子生徒について訊ねる。世人は「知ってる!一年の時からクラス一緒だからな」と返した。