普通の人ならば、「うるさいな」や「駄々こねてるのかな」としか思わないだろう。しかし、潤は違う。胸がギュッと締め付けられ、恐怖のあまり目を閉じてしまった。

「ッ!ここから、離れないと!」

潤はポケットにある耳栓を取り出して耳をつけ、急ぎ足でその場を離れる。早くなっていく呼吸を落ち着かせるため、「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせ、深呼吸を意識した。

潤は幼い頃から大きな物音が苦手だった。叫び声や怒鳴り声を聞くたびに恐怖が押し寄せ、パニック状態になってしまったこともある。それを心配した両親が心療内科に相談したところ、潤はHSPという性質を持っていることがわかった。

HSPとは、視覚や聴覚などの感覚が敏感で、感受性が非常に豊かな人のことだ。生まれつき持っているもののため、決して病気などではない。しかし、周りの感情に左右されてしまったり、刺激を受けやすいため、生きづらさを感じる人も多いのだ。